「柑奈」
機嫌の良い薫くんはいつもより二割増に格好良く見えて、あたしまでニコニコと薫くんを見上げていれば、パジャマの襟が内側に折れてしまっていたらしく、薫くんの手が伸びてくる。
「⋯っ、」
冷たい手が鎖骨の辺りを掠り、ほんの少しだけ、身体に力が入った。
「もうちょっと、警戒心持って」
「え⋯?」
「他の男家に入れちゃダメ」
「⋯っ、でも、」
「だだのトモダチでも、何とも思ってなくてもダメ」
「っひゃ、」
つーっ、と鎖骨の上を指でなぞられて変な声が出てしまったあたしを、ふっと嗤った薫くんはその最高に意地悪で格好良い顔のまま、カリッと、鎖骨を引っ掻いた。
後が残らないくらい、優しく。
だけどちゃんと、感じる強さで。
甘く、甘く。



