「いいよ、べつに」 「い、い⋯?」 「柑奈に移されるんならいい」 「⋯!」 「まぁ、こんなんじゃ移らないと思うけど」 「あ、甘い⋯!」 なんだか薫くんが甘い気がしてゴクリと唾を飲み込んだ。 「薫くん⋯!」 「なに?」 「も、もう一回⋯」 「それは断る」 「えぇ⋯、」 調子に乗っておねだりすればあっさり断られてしまった。 でも、しょんぼりするあたしを見つめる薫くんは僅かに笑っていて、機嫌が良いんだなあと思った。