だけど、キュンとしたあたしとは対照的に、綺麗な顔を僅かに歪めた薫くんは「あのさ」と不機嫌な声を出した。
「柑奈はその陸斗って奴の言葉をいちいち気にしてんの?」
「え⋯?」
「意外?んなの他人に言われる筋合いないんだけど」
「⋯薫くん、」
「大体、俺お前のこと彼女じゃないとか、別れたいとか言ったことある?」
「ないっ⋯」
ピアニストのような指で涙を拭ってくれる薫くんの言葉にブンブンと首を横に振る。
薫くんは、初音さんにちゃんとあたしを彼女だって言ってくれた。
ウザいとか、素っ気なくされたりとかはあるけど明確に「別れたい」とか言われたことはない。
「なら、そんな他人の言葉にいちいち傷つかないでくんない?」
「っ」
「それで泣くとかマジでムカつくんだけど」
ブスっ、と眉を寄せる薫くんに、相変わらずキツい言い方だなぁ、と落ち込むけれど。
陸斗の言葉だけじゃなくて薫くんの態度にも不安になることはあるんだけど。
でも、それでも、今。
薫くんが何を言いたいのかわかったから。
素っ気なくて、冷たくて、意地悪で。
そんな薫くんの、伝えたいことがちゃんと伝わったから。



