「薫くん⋯、ハグ、したい」
夜の空気に消えてしまいそうな程小さな声だったけど、ちゃんと薫くんは拾ってくれたようで「ハグ?」とあたしを見た。
「うん⋯。あの、ギュッて抱き締める感じのやつ⋯」
恥ずかしい、というよりも言いづらくてモゴモゴとしていれば薫くんの手が伸びてきて腕を引かれた。
ふわ、と薫くんの香りが身体中を包み込んで、あっという間に温かい腕の中に閉じ込められる。
「⋯っ」
「柑奈」
「⋯、」
「何で今日来たの?」
「⋯」
「さっき言ってた理由ってなに?」
抱き締めながら言われた言葉に、びくっと肩が跳ねた。
さっきとは違い、怒っているのとは違う声にチクチクと胸の辺りが痛くなった。



