「あまりしつこい様だと退店して頂くことになりますよ」
あたしが迷惑な客だと決めつける様な言い方に、「あの、」と反論しようとしたあたしより先に薫くんが止めに入った。
「違うから」
「え?」
「コイツは違う」
薫くんがそう言うと初音さんは訝しげな表情で首を傾げた。
「違うって、何が?」
「彼女」
「ぅえ!?」
「うるさい、柑奈」
あっさりと“彼女”だと言った薫くんに驚いたのは初音さんではなく、あたしの方だった。
いや、もちろん初音さんも驚いていたけれど、それよりもあたしの声の方が大きくて薫くんに怒られてしまった。
でもでもでも、薫くんが初めて人に“彼女”だって言ってくれた⋯!
初めて!“彼女”って!
今までそんな事を言ってくれるのはもちろん、薫くんの友達にすら紹介してもらった事がないから嬉しいのと驚きと感動で感情が忙しくなる。



