それから一週間、初音さんの事で何か進展があるわけでもなく、普通に過していた。
「ねぇねぇ陸斗」
社会科担当の先生が出張で自習になった午後の授業、配られたプリントを進めながら隣の席の陸斗に話し掛ける。
「あ?今問題解いてんだから邪魔すんなよ」
「2問目で止まってるよ」
「うっせ、」
かれこれ自習が始まってから15分以上経っているというのに陸斗のプリントは真っ白で、辛うじて1問目が解いてあるだけだった。
「ねぇ、陸斗」
「だから何?」
「ちょっと聞きたい事があるんだけどさ⋯」
どうせ陸斗は真面目にプリントなんてやらないだろうと失礼な事を思いながら再び声を掛ければ、シャーペンを机の上にコロンと置いた陸斗がこっちを向く。
「何だよ」
「うん。あのね、男の人ってバイト先に彼女が来たら嫌なもんなのかなって⋯」
「何そのすっげー下らねぇ質問」
「下らなくなんてないよ!」
む、と陸斗を睨むと「どうせ自分と薫先輩の話だろ」と言われて「そうだけど⋯」と口篭った。