強く握った服はそこの部分だけシワが出来てしまっている。
だけどそんな事今のあたしに気付けるわけもなく、ただ薫くんからの返事を待っていた。
「柑奈、」
「早く、してよ⋯」
「何なの?いきなり」
「したいんだもん、いいでしょ⋯?」
早く、愛を確かめさせてよ、不安なんだから。
今だって頭の中であの人の声が聞こえてるんだから。
早く、薫くんだけしか考えられないようにしてよ。
「早く、キスしたいっ⋯」
涙声で言った言葉はすぐに消えてなくなった。
押し付けられた唇が言葉ごと飲み込んでしまったから。
「何で泣いてんの⋯」
「っないて、ない」
一秒も経たないうちに離れた唇はまだ、あと少しでも動けば触れてしまいそうな距離にある。
薫くんの吐息すら、感じることが出来る。
ユラユラと水気を帯びて揺れるあたしの瞳を見つめる薫くんの瞳はどこか、困っているように見えた。



