“ただの”可愛い彼氏

「ふぁきゃ!?」



変な声が出たのは,彼に驚いたからでも怒った純に痛い事をされたからでもない。

ただ,私の肩に片手を置いてガッと力を込めた純が,急接近してきたから。

純は反射的に目をつむった私の目蓋に,ちゅっと軽いキスを落とす。

そしておもむろにベンチをたつと,ベンチを背にする私をゆっくりと囲った。



「香奈,きすしたい」



可愛さより格好さの際立つ真面目な顔。

いつもより低くて,私との違いを強く感じさせる掠れた声。

どきどきと心臓が早鐘をうつ。

きす……

それは,1度だけしかしたことない。

それ以来なかったから,そういうこと,したくないのかなとか,よく思ってた。

それを,いま?