康生さんは、言っていたようにちゃんと帰って来た。


それは、けっこう夜更けで。


朝方目を覚ますと、ベッドで眠る私の横に居た。


私が眠ったのは、0時を過ぎていたから…。


この人が帰って来ていた事も、
隣で眠っていた事も気付かなかった。


起きてて笑ってる時は若く見えるけど。


今、眠っている康生さんの顔は、それなりに大人なのだな、と思った。


老けてる、ってわけじゃなくて。


この人の半生、色々あったのだな、と、その顔に出ているような感じで。


康生さんの頬に手を当てると、ほんの少し温かくて。


「…ん、どうした?」


康生さんの目が少し開いて、声が掠れている。


「ごめんなさい。
起こすつもりはなかったんですけど」


「いいよ。
まりあちゃん、夜ちゃんとご飯食べた?」


「えっと…。冷蔵庫にあった、プリン頂きました」


この人プリンなんか食べるのか?と、妙に気になり、冷蔵庫のそのプリンに手を伸ばしてしまった。


「それだけしか食べてないの?」


「はい…。
康生さんにお寿司一杯ご馳走になって、そこまでお腹も空いてなかったので」


生まれて初めて食べた、あの高級寿司。


本当に、舌が忘れられないくらいの、美味だった。