乾いた風が冷たかった。それでも、握られたままの手には熱がこもっていた。俺からしたら温かくても、神崎からしたら冷たいはずなのに、彼が俺の手を離そうとする素振りはなくて。ただ、静かに、言葉もなく、繋いだ手をそのままに、夜の街を照らすライトを頼りに歩き続けるだけだった。

 すれ違う人の視線が、刺さる。普通に歩いていれば、俺と神崎のことなんて誰も気にも止めないだろうに、男同士で手を繋いでいるからか、好奇の目で見られているような気がしてならなかった。

 そのあまりの恥ずかしさに、神崎、手、といつまで握ってんだよという気持ち込めて声をかけるも、聞こえているのかいないのか、これといった返答はなかった。神崎。彼の熱がそのまま胸に伝播しているかのように急上昇する心拍数を必死に落ち着かせながら再度名字を呼べば、まるで挑発するように、勘違いさせるように、はたまた思い出したように、いとも簡単に指を絡められて。動揺した。

「え、かんざ、き……」

 何度呼んでも、彼は俺を振り返らない。口も開いてくれない。元々寡黙な性格だからか、感情が読み取りづらかった。怒っているのかいないのか。不機嫌なのか通常運転なのか。よく、分からない。仮にもし、怒っているのだとして、何に対して機嫌を損ねているのかもはっきりしなかった。