冷え切った皮膚でも抱いといて

 唇を噛んで、押し寄せる感情の波に堪える。それでも満杯まで注がれたグラスからはみ出すように零れ落ちてしまう水滴。頬を伝う涙は、あまりにも冷たくて。俺の体温はこんなにも低いのだろうかと悲しくなった。神崎の心や体を温めたくても、これでは皮肉にも熱を奪っていくだけであることに胸を締めつけられる一方で。例え冷たくても、冷え切っていても、このまま抱いといてほしいなんて乞い願う自分もいた。

「神崎、殺して。俺は神崎の言葉で、死にたい」

 声が掠れる。声が震える。声が上擦る。泣きながら喋ることが、どうしてこれほどまでに苦しいのか。言葉を口にすることで、更に涙が溢れてくるのはどうしてなのか。本当は怖くて。怖くて怖くて、怖いのかもしれない。神崎と離れ離れになることに恐れを抱いているのかもしれない。覚悟を決めた、受け入れたと思っても、実際は、悲しくて苦しくて仕方がなかった。自分が溶けて死ぬことよりも、神崎を一人残して消滅してしまうことが。悲しい。苦しい。それでも、神崎からの好きがほしい。好きが、ほしい。

 目が、熱い。喉が、熱い。胸が、熱い。涙が、止まらない。神崎は、まだ、何も言わない。吸った息が、音にならない。全身が、震えている。込み上げる本音を我慢するように、震えている。俺が、追い詰めている。突き付けた現実で、振り翳した言葉で、追い詰めている。