冷え切った皮膚でも抱いといて

 俺がアイスじゃなければ、神崎を苦しませることなんてなかったのかもしれない。自分がジュースじゃないという確証があれば、神崎は苦しまずに済んだのかもしれない。アイスとジュースが、俺と神崎を掻き回す。アイスを呪った。呪っても、何も変わらなかった。変わらなかったから、恋に臆病になって、思うように身動きが取れなくなった。それでも俺は、後悔したくなくて。想いを伝える選択をとった。これが正解か不正解かなんて、多分、ずっと、分からないままだろう。

 嗚咽する声を漏らす神崎の手が、俺を強く抱き寄せる。寡黙でクールで、でも本当は人一倍繊細で純情な心を持つ神崎の、精一杯の抵抗のようで、反抗のようで、一種の現実逃避のようで。神崎の言葉を、神崎の声を、喉元に突きつけた大きな鎌で殺しているのは、紛れもなく俺だった。自分勝手で、自己中心的で、神崎のことを第一に考えているようで何一つ考えられていない最低な俺が、神崎の心を殺している。アイスである俺からの好きが、神崎を苦しませている。ごめん、神崎。神崎、ごめん。身勝手で。独り善がりで。ごめん。

 必死に俺に縋りつく神崎の、溶けて消えてしまいそうなほどに朧げな吐息が、震える手や体から伝わる悲痛な心の叫びが、胸に深く突き刺さる。刺さって、刺さって、苦しいくらいに深く、深く刺さって。それは俺の涙腺を緩ませた。壊した。おかしくさせた。最期まで、泣くつもりなんてなかったのに。