冷え切った皮膚でも抱いといて

 神崎の口数が人一倍少ないこともあってか、密閉された一室には沈黙が広がっていた。俺も一人でぺらぺらと喋り続けられるほど饒舌ではないため、気を遣うような、場の空気を盛り上げるような明るい言葉は発さなかった。発せなかった。

 口を閉ざす神崎は、小刻みに震えているその手で俺に縋るように、胸の内を必死に隠そうとするかのように、徐に指を絡めてきた。彼の方に視線を向けると、伏し目がちに俯くところで。触れたら最後、崩れて壊れてしまいそうなほどに儚いその表情に、胸を締め付けられる思いがした。晒されていた横顔に影を落とさせる、男にしては綺麗すぎるほどのさらさらな黒髪すら、彼のことを覆い隠すための手助けをしているかのよう。

 秘めていることがある。言いたくても、言い出せないことがある。体の内側で響めく言葉を鎮めさせるように、彼の喉仏が上下した。その首は、白かった。何の跡もなくて、綺麗だった。彼の横顔は、思わず見惚れてしまうほど、美しかった。