夢の中で落ちた重たい瞼を、ゆっくりと持ち上げる。ぼやけていた輪郭が一つの線となってはっきりしてくると、眼前に無防備な鎖骨と喉仏が見えて、あ、と咄嗟に飛び退いてしまいそうになったが、背中に回されていた腕がそれを阻止するように俺を引き寄せた。秋月、魘されてた。上から降ってきた、魘されていたという俺を案ずるような声に、夢の続きの如く髪を撫でる神崎の手に、感情を煽られて。次第に目頭が熱くなった。声が近い。息が近い。温かい。心音も聞こえる。感じる。神崎は、生きている。それが嬉しくて、死んだのは悪い夢だと分かっていても安心して、俺は服に涙を擦り付けるように、泣きそうになっている表情を隠すように、神崎の胸に顔を埋めた。
嗚咽を堪えながら甘える俺を見ても、神崎は何も言わなかった。魘されていた理由も、涙のわけも、何も、聞いてこなかった。ただ、優しく、落ち着かせるように優しく触れるその手に、自分とほとんど体格の変わらない男に胸を貸してくれるその余裕に、体温の低い俺に自分の熱を分け与えるような、優しくも力強い抱擁に、ひたすら心が安らいだ。
嗚咽を堪えながら甘える俺を見ても、神崎は何も言わなかった。魘されていた理由も、涙のわけも、何も、聞いてこなかった。ただ、優しく、落ち着かせるように優しく触れるその手に、自分とほとんど体格の変わらない男に胸を貸してくれるその余裕に、体温の低い俺に自分の熱を分け与えるような、優しくも力強い抱擁に、ひたすら心が安らいだ。



