視線が交錯。吐息が混合。神崎の匂いが染み付いたベッドの上で、徐々に、徐々に、近づく距離。期待に胸を膨らませながら、神崎、と囁けば、彼はそれに応えるように髪を撫で、頬の輪郭をなぞった。優しく、できないかもしれない。呟かれた言葉に答える間も無く、押し当てられた熱い唇。

 念願のキス。たった一回のキス。それだけで、胸を覆っていた靄が綺麗さっぱりなくなるほど、心が満たされていくのを感じた。同時に、もっと、もっと、欲しくなる。自分がアイスであることを忘れるくらい、神崎に求められたい。触れられたい。無我夢中になって、理性なんて捨てて、目の前にいる好きな人をずっと感じていたい。

 神崎、神崎。一度触れて離れた唇を再度求めるように、俺は彼の吐息に指先で触れた。口は半開き。両目の奥は熱い。視界はぼやけている。完全にしまりがなくなっている俺を見下ろして息を呑む神崎の手が、気持ちを分散させるかのようにシーツを握り締めたのが分かった。まだ彼の中で、理性と本能が鬩ぎ合っている。その葛藤をなくさなければ、と自ら彼の唇に触れようとしたら、不意にその手を掴まれ自由を奪われた。