冷え切った皮膚でも抱いといて

 神崎との間にある扉を、音を立てないように指先で撫でた俺は、神崎に触れたい。触れてほしい。求めるように唇を引き結んで。それでも、いつまでもここにいては出てきた彼を驚かせてしまうだろうから。扉に触れた指先を滑らせるようにして距離を取った。簡単には紡げない二文字を胸に秘めながら、神崎のいない部屋へと向かう。

 手で頬を押さえれば、まだそこには熱がこもっていた。神崎が戻ってくる僅かな間に、この昂る感情を冷まさせなければ。目すら見られなくなって、気まずくなる。でも、どうせ俺は、アイスだ。こんなの、すぐ、冷える、し、体が熱いと俺自身は感じても、神崎にとっては、冷たいんだ、きっと。

 恥ずかしがっても、期待しても、それを上回るほどの切なさや悲しさが気持ちをブルーにさせる。俺が。アイスじゃなければ。神崎が。ジュースじゃなければ。どちらかが。ノーマルであれば。何度思考を巡らせても、アイスじゃない自分を思い浮かべて空想しても、俺の体質は何も変わらないし、神崎がジュースである可能性がなくなるわけでもない。