冷え切った皮膚でも抱いといて

「ごめん、いきなり。着替えてくるから、先飲んでて」

 ギリギリのところで触れるのを躊躇した唇で、神崎は言葉を落とした。その後、するりと名残惜しそうに俺の服を滑る手。指先。彼は俺と目を合わすことなく脱衣所の扉を開けて。少し距離を置くように中に入って行った。

 ポツンと一人取り残され、その場に立ち尽くしたまま数秒。扉の向こう側で微かな物音がして、徐々に、むくむくと、恥辱心が湧き上がってきた。手が自然と首筋に触れ、キス、されそうになったことに顔が赤くなる。胸や背中を中心に熱が広がっていくような感覚。体感。今、あの手で触れられたら、冷たいなんて思われないかもしれない。俺の低体温で、神崎の熱を奪うこともないかもしれない。俺はアイスじゃないと、自分自身も、神崎も、一時の夢を見ることだってできるかもしれない。そんな、ありもしないことを思って、願ってしまうくらい、同級生の舌が触れた首筋を気にして心が穏やかでいられなかったかのような神崎の行動に、羞恥や期待を抱き、それにより全身が熱くなっていた。酎ハイをぶっかけられ、服を濡らされたことは気にしてないと言ったのに。首筋に関しては。まるで嫉妬のような感情の吐き出し方に胸が弾み、小さな好きが積もっていく。