冷え切った皮膚でも抱いといて

 あまりの距離の近さに心臓が早鐘を打ち始め、瞬きが増える。視線もキョロキョロと右へ左へ大忙しで、落ち着きがなかった。少しでも動いたら神崎の唇が肌に当たってしまいそうで。全身の筋肉が収縮。それにより硬直。おまけに、鼻を掠める神崎の匂いに頭がくらくら、ふわふわ。こんなの冷静でいられるはずがない。

 手で触れ合った時よりも明らかに動揺してしまっている俺の腕を捕らえる神崎の手に力が入る。押し寄せて湧き上がる感情を無意識のうちにぶつけるような力加減だった。痛いというよりも、冷静な神崎が感情的になっているようにも思える行動に少し驚いてしまう気持ちの方が強い。

 神崎の胸板、鎖骨あたりに触れてせめてもの抵抗を示しながら、彼は何かを我慢しているのだろうかと落ち着き払ったもう一人の自分が思案していると、耳のすぐ近くで歯軋りをするような音が聞こえた、と思ったら、ふ、と意図的か、無意識か、首筋に息を吹かれ、くすぐったさと驚きに肩が揺れた。神崎の行動の真意が読み取れなかった。