秋月(あきづき)って、アイス?」

「……え?」

 高校の同窓会。周りのボルテージが上がり続ける中、アルコール度数5%程の酎ハイを片手に一人で飲酒をしていたら、空いていた俺の右隣を当然のように陣取った其奴、俺が高校時代から密かに想いを寄せ続けている神崎(かんざき)が、ほろ酔い気味になっていた俺の目を覚まさせるのには十分すぎるほどの言葉を投げかけてきた。

 久しぶりの再会で突拍子もなく聞かれた疑問。え、え、と狼狽えたようにその一文字を繰り返すだけの俺を尻目に、神崎は手に持っていた酎ハイを一口飲んだ。偶然か、必然か、俺と同じ味のそれを。彼の少し浮き出た喉仏が上下する。

「アイスじゃない?」

 目にかかりそうなほどに重たい前髪を、頭を振って整えた神崎が、返事を急かすようにアイスかアイスじゃないかを再度尋ねた。酒のせいだろうか、彼の目はほんの少し熱っぽい。泥酔とまではいかないが、少々気持ちよくなっていることは窺えた。神崎のせいで酔いが覚めつつある俺は、意図せず胸を弾ませているというのに。そんな風に恋を再燃させたって、俺にとっては意味なんてないのに。

 グラスにまだ半分くらい残っている酎ハイに視線を落として、あー、えー、と曖昧な言葉を返しながら本当のことを言うべきか否か思考を巡らせる。神崎は多分、気づいている。気づいていて、確認のために聞いているんじゃないか。