それから一年後の春ーーー。




「カルティナ姫、おはよう」

「ルイトさん、おはよう」

 朝起きてベランダに出るわたしの肩を、ルイトさんはそっと抱いてくる。

「姫、見て。ぐっすり眠ってる」

「本当だ。……可愛いね、本当に」

「ええ、可愛いですね。僕たちの赤ちゃん」

 レイリア王国で桜が咲く少し前、わたしはルイトさんとの間に、第一子である男の子を出産した。

 妊娠が分かったのは、結婚してから三ヶ月目くらいの時だった。それは夫婦として歩んでいくわたしたちには、とても嬉しい知らせであった。
 
「カルティナ姫に似てるかな」

「そうかな? ルイトさんにも似てると思う」

「似てる?」

「うん、似てる」

 わたしたち夫婦に第一子が誕生したことは、お父様もすごく喜んでくれた。
 お母様もきっと、喜んでくれると思う。

「この子には、幸せになってほしいなぁ」

「ん?」

 気持ちよさそうに眠っている我が子を見つめながら、わたしはそう呟いた。

「この子には、幸せになってほしいなって思って。 わたしたちみたいに」

「そうですね。この子が幸せになってくれることが、僕たちにとっては一番ですもんね」

「うん」