「待てやゴラァ!!!」


「このクソガキが…!!ナメた真似してっと指詰めんぞオラァ!!」



って言われて、逃げない人っている…?


そんな人がいるならどうぞ私のスマートフォンへご連絡を。

褒めてあげる、なんかもう良くわかんないけど褒めてあげるから。



「はっ…、はぁ…!」



とか言ってるけど、そういえばスマホ持ってないんだった…。

それすら奪われて、身分すら奪われて、下手したら今日には違法風俗店に売り飛ばされていたところだ。


……高校入学手前で。



「うわっ…!なんだ…?」


「すっ、すみません…!」



人にぶつかり、路上に並んでいる自転車を倒し、それでも止まることだけは絶対にしちゃいけないから。


天は二物を与えない───そう、それはあっている。

だから私に与えられた唯一は、この脚力だけ。



「はっ、なんとか…っ、撒いた…?」



中学3年間、陸上部のエース。

そこだけが人に自慢できるステータスだった。


だから推薦入学で有名校に入学が決まってたのに……綺麗さっぱりと白紙の今。