しかも誰も来ないんじゃと思ってたら、今日はふたり読みに来ている。
本借りるのかな。
…貸出ってどうするんだっけ。
先生に教えてもらったことを復習しようとしたところで。
「この本、貸して」
と男子生徒から声をかけられ、本を二冊渡してきた。
えっと、まずは本の一番後ろにある貸出の用紙に日付を…って用紙がない?
本来挟まっているはずの場所になくて焦る。
パラパラと本をめくっても見つからない。
「なあ、まだ?」
紛失なら新しい貸出用紙に書くしかないかな、と。
用紙の在庫に手を伸ばしたときだった。
「本の一番後ろに挟まっていた紙、もうひとつの本の栞にしませんでした?」
少し高めの優しい声に、手を止める。