「除名はさすがにやりすぎじゃねえの」
「普通ならね。だけど私情に呑まれやすい人間って、組織にとって危うい存在になりかねないと思ったから」
自分で除名しておいて、静日は憂いた表情を浮かべる。
まったく意味がわからない。
「いつ、安藤が私情に呑まれたよ」
「すばるが中へ入りたがらないのは最初から予想できてた。だけど、実際に入らないことを選んだのは、たぶん安藤のせい」
「はあ？」
「あの門番、昔から俺を盲信してたんだ。同じ構成員にすら、俺に近づく奴には嫉妬して蹴落とそうとしてたし」
ああ、怖い。
関心がないくせに人をよく見ているところ。
「恐らくすばるにも、蔑む視線、侮辱に等しい言葉……浴びせたんだろうなあと」
恐らく、で除名するなよ、と思う。
だけど、静日の恐らくは確信であり核心であることを、おれは自然の摂理のようにわかっていた。
深い漆黒は、世の中のすべてを見透かしている気がする。
