握らされたのは、紛れもない“京静日の学生証”だった。
行かない、という選択肢を奪われて途方に暮れてしまう。
京様は滅多に学校に来ないんだから、学生証なんてなくても大丈夫なんじゃ……。
でも学生証っていろんな場面で必要だったりする。
カフェとかカラオケとか遊園地の学割とか……。
学割を使って遊んでる京様なんて想像もできないけど、
学生にとって学生証は身分証と同じわけだから、とにかく個人の大事なものであることには間違いない。
家に持ち帰って紛失でもしたら笑えないし。
持ち歩いて学校で落としたら、もっと笑えないし。
――『俺との約束。破ったら殺すよ』
あの脅しも本気じゃないとは限らない。
いくら考えても同じ結論にたどり着く。
やっぱりわたしは龍泉閣に行くしかない……みたいだ。



