「静日、そろそろ時間だぞ」
食堂の入り口から朱雀院様が入ってきた。
京様がゆっくりと腰をあげる。
「あーあ、帰んのだーるい」
「ちゃんと口止めしたんだろうな」
「さあ?」
「さあって」
ぎろり、朱雀院様の視線が流れてきて、とっさに焦った。
「だ、大丈夫です、ラーメン奢ってもらったので絶対言いません!!」
「……。静日は、本来あんたみたいなのは近づくことすら許されない人間なんだ。そこだけは覚えとけよ」
「は、い」
それはもう、重々承知してるよ……。
明らかな敵意を向けられてびくびくしてしまう。
早くこの場から立ち去りたい。
この時間が終わったら、もう二度と関わらなくて済むんだし。
「ねえ、お前名前なんてゆーの」
一度は背を向けたはずの京様が、不意にこちらを振り返った。
つられて振り向いてみても、当然誰かがいるわけもなく。
「わたし……?」
「そうだよ、わたしだよわたし」



