──“みやびはみやびだし、すばるはすばる。それだけのことだよ”
お母さんは、わたしがいないところでも優しかった。
でも、その時みやびへ返してほしかった言葉はそんなんじゃなくて。
“すばるは可哀想じゃないよ”
“お母さんの自慢の娘だよ”って。
嘘でも……そう言ってほしかった。
もちろんわたしは自慢できることなんて、なにひとつ持ってないって、わかってるけど……。
──家では、お義父さんの言うことは絶対だった。
お母さんがどんなにわたしを大事に思ってくれてたとしても、お義父さんがわたしを除け者扱いするなら、口ごたえはできない。
ウチは決して貧乏なわけじゃない。
それでもお義父さんは、わたしに対してお金を使いたがらない。
働いてるのはみやびのため。
みやびがやりたいことは何でもやらせてくれる。
だって、みやびは“できる”から。
特にピアノは、先生に今までの生徒で1番上手だと言われてて、小学生の頃からいつくものコンクールで賞をとってる。



