母を捨てた男との娘。
血の繋がらない娘。
おまけに鈍くさくてなんの取り柄もない娘。
可愛がってもらえるわけがない。
わたしが近くにいるときのお義父さんは決まって機嫌が悪かった。
反対に妹のみやびは、やらせれば大抵のことは上手くこなせるし、明るくて社交的だし、加えて容姿もすごく可愛らしい。
それに、すごく優しい女の子。
優しいから、わたしが気を悪くするようなセリフを直接言ってくることはなかった。
──“お姉ちゃんて鈍くさいよね、何しても上手くいかなさそう。誰に似たのかな、可哀想だね”
それを聞いたのは2年前。
わたしが中学3年生、みやびが小学6年生のときの、ある夕方のこと。
ただいまを言おうと、お母さんのいるキッチンの扉を開けようとしたところで聞こえてきた会話だった。
棘のない口調。純粋な哀れみ。
みやびにとっては悪口でもなんでもなくて、自分との違いが本当に疑問だっただけ。
それがわかるからこそ誰も責められなくて、悲しさが行き場を失った。



