真凛ちゃんの言う龍泉閣こそ、街の第一のシンボル。
街一番の高さを誇る荘厳な建物の名前であると同時に、街一帯を仕切る権力組織の名前でもある。
龍泉閣のトップの座に就いた人は代々『皇帝』って呼ばれてて、
現在の13代目の皇帝が、京静日っていう、大財閥・京家のご令息らしい。
なんでも、この世のものとは思えないくらい整った容姿をしてるんだとか。
ただ……とんでもなく冷血で、悪魔みたいだって噂。
「一目でいいからお会いしたい〜〜、あわよくばお近づきになりたい〜〜」
目の前の美味しそうなランチ定食はそっちのけ、京様の話ばっかりな真凛ちゃん。
「真凛ちゃん、食べないならその唐揚げもらっていーい?」
ダメ元でお箸を伸ばしてみれば、なんと。
「いいよいいよお食べ〜。すばるちゃんて、相変わらず食い気がすごいよねえ」
「えっいいの?……5個しかない唐揚げのうちの1個って、相当大きな損失だと思うけどほんとにいいの?」
「出待ち付き合ってもらうお礼ね」
「やったあ。へへ、ありがと〜」