「で。この子どうする?」
朱雀院様が、冷たい音を立てて鉄の階段を下りてくる。
──そっか。
わたしは、鈴木要と名乗る彼の正体を京様だと知ってしまったから。
処分を受けないと、いけないらしい。
近づいてくる足音、縮まる距離。
恐怖が喉元までせり上がる。
「いい。お前は下がってろ」
制する声が不意に響けば、朱雀院様の動きがぴたりと止まり。
それから、1秒、2秒、3秒――。
ゆっくりと下りてきた京様の影が、目の前に落ちた。
「望みを一つ聞いてやる。言え」
「っ、え」
「それとも今ここで、その口きけなくしてあげよーか?」
おそらく伊達であろうメガネの大きなフレームの奥で、ふたえに縁どられた瞳が妖しく弧を描いていた。



