幸い、零れたのは一滴だけ。


“その人”を前にして止まったのは涙だけじゃない。


次に瞬きをするまでのほんの刹那、呼吸も心臓も、時間さえも、わたしの中でたしかに概念を失った。



今まで出会った誰とも違う。

京静日という人は異様な静けさを纏っていた。