わたしがそばにいることは……静日くんにとって迷惑にしかならないのに。


「それに、宮名さんのお母さんもとても喜んでくれてたよね」


さっきのお母さんの顔を思い出す。

あんなに嬉しそうなお母さん、久しぶりに見た。

わたしのことでここまで喜んでくれたのは初めてかもしれない。



……飛鳥井くんの話を受ければ、きっと、褒めてくれる。
愛してくれる……。


夢にまで見たことが叶うかもしれない。

わたしがこの学園に入った理由を考えれば、断る理由は、もうどこにもないのに。



──どうして

こんなに悩んじゃうんだろう……。



──“可愛いね、すばる。……好き……大好き”



さっきから何度も何度も流れてくる声を、頭から無理やり振り払う。


静日くんとは……遅かれ早かれ、いつか離れる。


たまたま出会って、秘密を共有しただけの関係だから。


朱雀院様は、静日くんにとってのわたしを爆弾だって言ってたけど、それはわたしが秘密をバラす可能性があってこその理由。

鈴木要くんが学園に現れてもう1ヶ月以上経つ。


これまで、鈴木要くんの正体が静日くんじゃないかっていうウワサが立ったことは1度もない。静日くんも、今さらわたしが誰かにばらすなんて思ってもないだろうし……。


はっきり言って、もう時効だと思う。