立ち、位置……。

この街でトップの権力を持つ京グループのご令息であり、この街の象徴である龍泉閣の皇帝。


改めて思い出して、はっとさせられる。

最近は近くにいすぎたせいで、感覚が鈍ってしまっていた。忘れかけていた。

本当は、わたしなんかが近づくことは許されない雲の上の人。龍泉閣の構成員の人たちですら、直接話すこともなかなかできないほどの……。



「京家と龍泉閣の名を背負った男が、Aクラスの女の子と一緒に住んでいることが周りにばれたら……どうなるかわかるよね?」



ぞくりとした。


そうだ。

もともと、わたしは構成員の人たちによく思われていなかった。


静日くんの命令だから、表面上よく接してしてくれているだけ。

わたしの存在がばれたら、京家や龍泉閣の品位まで落としてしまう。



「静日くんに、迷惑を、かけちゃう……?」

「騒動になってからじゃ遅い。傷つくのは宮名さんだから、あそこからは早めに出ていったほうがいいよ」

「…………」

「家に帰りたくないんだったら僕の家においで。初めから僕と住んでいたことにすれば、龍泉閣にも迷惑はかからないから。……ね?」



優しく諭すような口調だった。

好きな人のそばに、少しでも長くいたいだなんて思ってしまった自分が恥ずかしくなる。