──キーンコーン、カーンコーン……。
チャイムより少し遅れて先生が入ってきた。
皇城学園の美術の先生は若い男の先生。
メガネをかけていて、無口でミステリアス。
「今日のデッサンのテーマは、皆さんの“好きなもの”とします。50分以内に描いて提出してください」
それでは始め、と。
はじめのあいさつもなく授業が始まった。
「先生〜、好きなものってなんでもいいんですかー? 例えばポケモンのキャラクターとか」
後ろ席からクラスメイトが尋ねる。
「ええ。あなたにとっての好きなものですから、キャラクターでも食べ物でも景色でも人でも……なんでもよいです。好き、と聞いて1番に思い浮かんだものを描きましょう」
好きなもの……。
ぽわん、と浮かんだのは、あろうことか、書斎で勉強をする静日くんの姿だった。



