正面の席、左へとひとつずれて、なめらかな肌から上へと視線を滑らせれば、あの頃の面影を残したまま、さらに綺麗になった容姿が目を引く。



明瀬 菜々(あかせ なな)。

俺が、傷つけた女。






あまりに現実が信じられなくて、今日も見た夢の続きかと思ったけど、がやがや騒いでいるサークルメンバーも、今いる店も、さすがに幻ではなかった。




だんだんと心音が速まっていくのがわかる。それくらい驚いている自分に戸惑う。



なんで、ここに…。



凝視しすぎていたのか、かち、と目が合ってしまい、少し驚いたような表情だったけど、先輩の乾杯音頭の方に目移りされる。





なんだよ…。


すとん、と胸に落ちてきた思いはそれだった。


垢抜けたなんてもんじゃない。友人と笑い合う菜々は、俺の知っている姿とは程遠かった。




「おい、飲んでるか、碓氷(うすい)」


ちょっとあっちに行っててくれ、なんて悪態をつけるはずもなく、肩に腕を回してくる先輩に笑顔で返答してもう一度彼女に視線を戻すと。