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「さっむ」



12月下旬、窓際から吹き込んできた風に目を細めながら賑わう声の方へ足を向ければ。



「お、壱成(いっせい)じゃん」

「…あぁ」

「テンションひく!」



同じ学科の松永 朱里(まつなが あかり)が学食の列に並んだ俺の前にいた。


この大学の学食はおいしいが、行列が嫌だからなんとかしてほしい。

そんなことを思いながら松永の前へと視線を滑らせる。




「講義おつかれ、壱成」


さらさらの髪をなびかせて俺を見た瞬間はにかむそいつを見たら、ほんとに今日の疲れが吹っ飛んでいく気がした。

青綿 呉羽(あおわた くれは)。
俺の幼なじみ。



「おまえ、なに食べんの?」

「えっとね、野菜スープと肉だんご」



配られた料理を見ながら、んーと眉を寄せ合って渋い顔をしているのは、側からみたら、なにしてるんだと思われる表情。

だけど、見慣れた俺にとっては、肉だんごが思ったよりも小さいことに落胆しているんだとわかる。