静かに体勢を起こして、そう言い放った新谷くんは、まるで、ぜんぶを突き放すような顔をした。


逸らされている目には前髪がかぶさって、肝心な時に探れない。



「あ、新谷くん…?」

「あーはいはい、この話終わりー」

「え…」


知らない人みたいで少し怖くなり、呼びかけると、カタ、と音を立てて、新谷くんが顔をあげた。




「プリント終わった?」

「い、や、まだ」

「終わったら起こしてくんね」

「…自分でやって」

「ケチだなー」




さっきの、雰囲気はなんだったんだ。

それくらい急に、明るくなる新谷くん。


彼方くんが親友だってこと、そんなに怒ることなのか。この前も、否定してたし…。




「じゃー寝るわ」

「わたし起こさないよ」

「起こすよ」

「なに」

「沙葉はどーせ、起こしてくれる」



それだけ言って、また机に突っ伏す新谷くん。

わたしはプリントを解くのを再開する。


せっかく彼方くんが差し入れしてくれて、いい気分だったのに、目の前をちらつくのは、べつのこと。




やっぱり、新谷くんは

知れば知るほど、わけわかんない。