「あ、あとは、おもいっきり笑った顔と、不器用なだけで実は優しいところと、それから、」
「…もーいい」
クソ真面目に好きなとこを並べる沙葉の言葉を遮る。
「…あれ？もしかして、新谷くん、照れてる？」
「うるさい」
「もしかしなくても、照れてるよね？」
上目遣いで無防備に笑う沙葉。
我慢してやろうかと思ったのに、こんなの、やっぱり無理だ。
「…っ、新谷くん」
「形成逆転」
今日でもう何度目かわからない唇を奪った先で、沙葉があたふたしはじめる。
「ずるいよ」
「どっちが」
小さな抵抗で俺を押すくせに、すぐ真っ赤になる。
強く閉じた目が可愛いとことか、こーいうのは、ぜんぶ、俺だけが知ってればいい。
彼方にだって教えてやるもんか。
それから、いつか大好き、とか、言われてみたい……なんて、あの頃の俺に言ったら、笑うだろうか。
……べつに、いい。
そんなのはどーでもいいから、沙葉をもっと、大事にしたい。
もう一度、小さな身体を抱き寄せる。
「先生のとこ、行かなくていいの？」
「そう思うなら、離してよ」
「んー」
「んーじゃないよ、ちょっと、新谷くん！」
そんで、こうやって、たまにいじわるしたい。
.END.
