「ちょっとブレザーを、」



取りたいから立ってもらえませんか?

そう言うはずだった言葉は、イスに伸ばそうとした手を新谷くんに掴まれたことによって消された。



「案外、せっかちだねぇ」

「っ」



にやり、危うげに刻まれた微笑があまりにも整っていて、思わず息を呑む。



ためらいなく引っ張ってくる新谷くんに距離が近づいて、男子に免疫のないわたしは文字通り、固まる。



なに…?!



「見た目的に純粋系でくるのかと思えば、俺に触れようとしちゃってさ」



……は?



「…いや、わたしはブレザーを」

「はいはい、悪いけど、用事できて行けねぇんだわ。だから、今日はこれで我慢して」



こっちのことなんてガン無視でさらにくいっと引っ張られる。




「…っ、」


その力に抗えずに体勢が崩れると、





あっという間に、視界が新谷くんの前髪で埋まっていた。