「そんなにいやな顔するなら、忘れればいい」
この人は、ほんとに……めちゃくちゃだ。
「なんで、こんなこと、」
「しらねーよ」
そう短く吐き捨てた新谷くんが立ち去っていく。
わたしは足が動かなかった。
しらねーよって……なに。
新谷くんでも知らないなら、だれに聞けばいいの。
感覚的に5分くらいが経った頃、サッカーのユニフォームを着た彼方くんがわたしを見かけて声をかけてきた。
苗村さんの事情を説明すると、彼方くんは風のように飛んでいった。
そんな光景に少し笑いながらも、頭のなかの新谷くんの姿は、喉の奥になにかがつまったように消えてくれなかった。