しばらく目で追っていたら、急に新谷くんがこっち方面に向かってくる。
べつにわたしの方に来ると決まっているわけでもないのに、そわそわしてしまう。
「沙葉」
「っ、なに?」
また、だ。鼓動が速くなる。
「ん、」
「え、」
わたしの前で立ち止まった新谷くんが手に持っていたタオルをなんの脈絡もなく渡してきた。
「なに」
「タオル、持ってないでしょ」
きゅ、と胸が鳴る。
新谷くんのくせに、不意の優しさってやつだな、………ずるい。
「汗かいたら、それで拭けよ。ちなみに新品だから」
「べつに、いいのに」
「ふっ、いーから、使えよ」
「…どーも」