「すごい速さでドタバタ駆けていって、ほんとに優星が来たから、びっくりしたよ。なんか、俺より優星のことわかってるみたいで、ちょっとショック」


「そ、そんなことないよ」


むしろ、そんなことがあってたまるか。


へぇ、とニヤついている新谷くんを横目で睨む。


ほらね、楽しんでる。
これだから、新谷くんは…!



「い、言っとくけど、新谷くんの味方したわけじゃないからね!」



第一、苗村さんを泣かせたことには、わたしだって怒ってるし。
なにより、その気分の良さそうな顔がムカつくんだ。



「はいはい、照れんなよ」

「照れてないっ」



新谷くんが笑うたび、心が騒がしくなる。

ムカつくのに、嬉しいような、矛盾してる自分がいる。


……こんな感情は知らない。

はじめてで、心臓がぎゅう…と縮んで、やっぱりわたしは、新谷くんを直視できなかった。