「彼方くんのこと、どうでもいいなら、なんで午後の授業出なかったの?」


傷ついてすらいないなら、平然な顔でもして堂々と授業を受ければいいのに。



「べつに、気分じゃなかった」


……うそつき。



「彼方くんと、ほんとにこのまま話さなくてもいいの?」

「いいよ、何回言わせんの。いい加減うぜーって」

「じゃあなんで、そんな顔してるの…」

「っ…」



今度はちゃんと見えた。
覗きこんだ数秒間、新谷くんが顔を歪めてるのが。



「ほんとはわかってるんじゃないの?彼方くんは、ちゃんと新谷くん自身を見てくれてる」



少なくとも、彼方くんに悪態をつく新谷くんは楽しそうだった。

繕ってなんかない、安心して気を許してるようだった、わたしにはそう見えた。



「うざい、おせっかいはやめろって言ったよね、俺」


「うるさい!心配してる人の話くらい聞いてくれたっていいじゃんっ」



大声を出したわたしに新谷くんが驚く。


……中途半端に弱さを隠しきれてない新谷くんの刺すような言葉なんか、わたしは信じないんだから。