「……当たり前に家族がいる沙葉にはわからない。俺はこーいうふうに育ってきたから、人に期待なんかしてないし、仲良しごっこもうんざりする。深く考えずにへーきで人のこと傷つけるやつなんていくらでもいる。俺はそーいうやつらと適当に過ごしてるほうが楽なの。要するに、冷めてんの。
…彼方だって、勝手に懐いてきてうざかった」





新谷くんの幼い頃の話は、わたしの想像よりもひどいものだった。


いつも笑顔が不自然だったのも、おなかの傷に触れられるのをいやがっていたのも、今では納得がいく。


そりゃあ、彼方くんのことも鬱陶しくなるわけだ。眩しいくらいの笑顔で周りと仲良く接する、いわば新谷くんとは正反対。

わたしのことだって、相当うざかったんだろう。なにも知らないで、最低だのきらいだの、散々言ってしまったんだから。