N駅前。

大通りに続く道。

私は駅前のベンチの前で、仁王立ちしている。



襟ぐりが深く開いた黒いざっくりニットセーター。

インディゴブルーの、スキニーデニム。

キャメル色のふわふわスヌードを足して、濃いグレイ色のコートを着た。

ヒョウ柄のヒールはお気に入り。

両耳のリングのピアスはいつものゴールド。



「うん、バッチリ」



私は自分で、自分への合格点を出す。

この私は、私だから。

ハイトーンブラウンのサラサラの髪の毛は、きちんとブローして下ろしてきた。



もしかしたら。

いつも通りの私服を着た私を見て、蒼生くんは今より、私に苦手意識を強めてしまうかも。

そのことが怖くないって言ったら、嘘になる。



(しっかりしろ、心愛!自分で決めたことじゃん!)



顔を軽く叩く。

今、ここには鏡は無いけれど。

私、多分勇ましい表情をしていると思う。

戦に向かう武将みたいな。



(だって、これ、ある意味戦いだもん)



その時。



「た、田中さん」



背後から呼ばれた。

振り向くと、そこには私服姿の蒼生くんがいた。