今まで一度も見た事のないテープに心臓が自分でも聞こえるぐらい鼓動していた。

楽しみよりも怖さの方が勝っていた。

震える手を必死に抑え、流すと赤ん坊の俺とそれを抱く父親の姿。

そしてビデオを撮影してる母親の声が聞こえた。

「名前は剛(つよし)って言います」

父は俺をあやしながら続ける

「強い男の子になって欲しいから付けました。強いのは力の事じゃなくて男として本当に強くなって欲しいって事です」

笑顔で言うが続けて

「何喋ろ?」

数分も持たずに母さんに話しを振っていた。

「これ剛が結婚する時にビデオ流したいんでしょ?頑張って!」

「うん。………えーっと……」

頭をぽりぽりかく父は俺にそっくりで少し笑えた。

「あ!ちなみにあなたのお母さんは生まれた瞬間にあなたの手足の指の数を数えました。さっき名前の由来に強くあって欲しいと言ったけど1番はあなたが元気で健康に育ってくれる事を願ってます!」

父は満面の笑みで言った。

「勉強出来なくても運動出来なくても剛が元気だったらそれで良いです!どうですか?良い大人になりましたか?」

その父の問いかけに撮影してるだろう母の声が聞こえた。

「うん、元気だったら本当にそれで良いよね」

それは姿は見えないがとても優しい表情をしてるのが想像出来る声だった。

「あと、なんかあるかな?」

しばらく考えた後に父親は

「幸せになれよー!」

ビデオの中で父と母の笑い声が流れる中、俺はもうこれ以上は見れないとビデオを止めて震えて泣いた。

泣いた。

泣きまくった。

こんな酷い息子にも変わらず愛情を注いでくれる母親に俺は何をした?何て言った?

「ちくしょう、ちくしょう」

自分自身が許せなかった。

強がって意地張って大事な人を傷つけて気付いた時にはもう遅くて。

「母さん…父さん…ごめん、ごめんよ」

心の底から声を出し泣き明かした。