畳の部屋を見るとふすまの破れの補修された箇所が目に入る。

(ふざけて破っては母さんに直してもらったな)

コーナーの角にクッション材が至る所に付けてあるのを見ては

(ちっちゃい頃頭をぶつけてたからその度に母さんが付けてくれたな)

中学に上がるまで毎年あげてた母の日の似顔絵が1枚1枚ファイルされたのが本棚に置いてあるのが目に入る。

あれも、これも、あそこも

色んな所に母さんが俺の事を考えてくれてるのが目に入る。

俺はおもむろに立ち上がりふすまに納められてるホームビデオを探した。

父が居ない俺に少しでも寂しさを与えないよう忙しいのにも関わらず学校のイベントには来てくれてた。

「あった」

それからしばらく小さい頃から小学生の頃までのビデオを出して見た。

ポタッ

ポタッ

一本のビデオを見終わると自分の手の甲に自然と自分の涙が溢れ落ちていた。

いつしか強さの意味を履き違え泣いたら負けだと自分に言い聞かせてきた。

俺は泣かなくなったが代わりにどれだけ母を泣かせてきた?

その回数は片手どころか両手でも足りない。

そんな自分が今となって悔しくてムカついて涙が自然と溢れ落ちた。

鼻水を拭き夢中でむさぼるようにビデオを見漁った。

中には小さい頃に何度も見尽くして言葉や展開すら覚えてる内容のビデオもあった。

沢山のホームビデオの中、

「なんだこれ?」

紙で包装されたテープがあった。

1番古い日付けでラベルに書かれたタイトルは

『結婚式の日に流すビデオ』

そう父の字で書かれていた。