きっと彼は悪役を買って出てくれたんだと思います。

私にバンドをやって歌わせる機会を作ってくれたんだと思います。

そこから私とたいした言葉のやり取りをする事なく歩きだした彼は私の姿が見えなくなった曲がり角で、これから私がボーカルとして始まるバンド活動や私が拓郎の事をどれだけ愛してるのかを再確認させ

「ふぅ!全くここまでしないと始まらないんだから全く損な役回りだぜ!幸せになれよ!」

とか路地裏で夜空見上げながら言ってるはずです。

「全く興醒めだわ!ぺっ!」

とか捨て台詞と道路に唾を吐いてるのは幻聴です。幻影です。

彼の足取りが大人のお店が沢山並ぶ繁華街に消えて行ったのは気のせいです。

スケートボーダーよりもアフリカ民族のが嫌いと改めて再認識させられました。

その日私は家に帰り怒りと涙で感情ごっちゃになりながらお口グチュグチュ揉んだミンをしまくった。

翌日、私は剛と大輔に連絡を入れてスタジオに足を運んだ。

「私、バンドしたい。だから歌わせろ!そしてベースもやってやるわ」

鼻息荒く怒ってる私は告げた。

「ちょっと待って!ベースボーカルするの?」

「ベース居ないんでしょ?つか、そんなに驚く事なの?」

「ベースボーカルはルート音を奏でるから、釣られてキーが合わなかったりするから難しいんだよ」

難しいと言われてもどれぐらい難しいのか想像もつかないし、そんなん言われても困ったと頭がちんぷんかんぷんになってる私に剛が言った。

「わかった!俺がベース覚えるから亜依子ちゃんはギター覚えてよ!ギター教えるからさ」

「あ、それが良いかも」

「みんなが協力する3本の矢の毛利元就作戦だね」

私達3-Arrowsはこの日正式に結成された。

「とりあえず、練習してコピーしよう」

「あ、私もうライブ予約したから再来月に」

そうピースサインして告げると二人共驚いた顔して

「無理無理」

「やるの!」

「ああもう!しょうがねぇ、そう言う勢いも大事か」

私の勢いに剛と大輔の二人は腹を括った。