「やばい、なんか私が緊張してきた」

「私も!ライブとか初めてで」

私と明菜はドキドキが止まらない。

「お互い好きな人が出るんだもんね」

麻央にニヤニヤされた顔で言われた。

私も明菜もお互い好きな人がこれから舞台上で演奏するから余計にも気持ちがたかぶっていた。

軽音部の人達の演奏が終わり、拓郎君達が登場してきた。

「キャー!きたー!」

私は大興奮してこっち見てと書いてキラキラ装飾したうちわを振った。

上島君が笑いながらこっちに手を振った。

(てめぇじゃねぇ)

そう思ったが私の横で明菜が喜んでたのでまあいいか。

準備の段階でアントニオ猪木の燃える闘魂が流れ思わず笑った。

一曲目のロックテイストに仕上げた校歌も笑いが起きて盛り上がった。

二曲目のモンゴル800のhappy birthdayは全体練習が上手くいってなかった段階までしか私は聞いてなかったので祈りながら聞いた。

「え!うまっ!」

「すげーかっこいい!」

ノリノリで余裕ある演奏を見せる3人に美しい声で気持ちを乗せて母を思い歌う拓郎君に心を奪われた。

そして、最後の3曲目の矢印と言う曲。

練習の段階では音源は耳にしていたが歌詞に乗せて歌うところを練習では聞いてなく本番で初めて聞く為、余計にドキドキしていた。

美しい声で美しい言葉を話す拓郎君が書く世界観の歌詞はどんなのだろう

普段の彼はピュアで鈍臭くて可愛く私を萌えさせる。

「聞いてください矢印!」

そう言う彼の表情はそれまでとは違い、力強くてカッコよくてまるで熱い炎のようだった。

(なに!?この歌詞は!?)

そして、彼の【ま】【お】【を】が入ってないながらにも書かれた彼の世界観の歌詞に、それを情熱的に歌う彼は暴力的に感じ私の感情も激しく燃やされた。

やばいぐらいにカッコよかった。

「これがギャップ萌えだわ」

演奏終了後、私は骨抜きにされた。

「凄い情熱的だったね」

「いや、めっちゃ凄かったねほんと!」

「かっこよすぎてやばい」

明菜と麻央とも分かち合った。

なんかもう今これ以上の刺激をもらうと死んでしまいそうなぐらい体も心も贅沢に満たされていた。