夏休み、今度の文化祭で上島君提案でライブやる事を耳にした。

「え?バンドやるの?私もなんか手伝いたい!」

意気揚々にマネージャーを名乗り出た。

3-Arrows

文字を見た時、私の好きな毛利元就の【3本の矢】が文字ってるみたいで大興奮した。

「聞いて!文化祭でライブやるんだけどバンド名に毛利元就よ!」

私はその日興奮して小学生時代の友人の田中明菜に電話した。

「バンド名、中々渋い名前だね」

明菜は何か勘違いしてた。

「亜依子に一つお願いがあるんだけど、文化祭チケット2枚ほしいなと思って」

「いいよー」

放課後みんな集まってのバンド練習。

時々雑談もして凄い楽しかった。

「何の話ししてるの?」

「今、みんなイメージの四文字熟語を言い合ってるんだよ」

「へぇ、私は?」

「天真爛漫かな」

吉田さんの発言に大友君が納得していた。

ありがたい、もっとそう言うのちょうだい。

高ぶる喜び!嬉しい!良い言葉最高!

「挙動不審」

さりげなく言った上島君の言葉がスッと私の感情を落ち着かせた。

「てめぇ、上島覚えとけよ」

私の怒る素振りにみんな笑った。

「ひぃ……。た、拓郎は?亜依子ちゃんの四字熟語なに?」

私の顔を見て少し考えた拓郎君が口にした。

「一笑千金かな。笑顔が可愛いから」

「ありがとう!嬉しい」

ちょっとドストレートに褒められた事に予想外過ぎてマジで照れた。

その後もみんな色々四字熟語を言い合って笑った。

「じゃあ、またね」

「拓郎君、駅まで一緒に帰ろう」

校門を出ると周りの山々が夕陽に照らされていた。

「ちょっと見てもいい?」

そう言って拓郎君はガードレールの側に行って眺めに行った。

私も拓郎君の後を追って彼の隣に立った。

遠くを眺める彼の横顔は穏やかな顔をしていた。

「風景見るの好きなんだね」

「うん。朝も昼も夕方も夜もその時間によって見え方が違うから好きなんだ」

そう言う彼に幼き頃に男の子と一緒に見た雪景色がフラッシュバックした。

「都会は夜景がキレイだけどここみたいな田舎は今みたいな時間が1番キレイなんだよ。ちなみに自然の美しさを表す言葉があって…」

あの日の私は自然の美しさよりもその後に彼の放った言葉にキュンとした。

「「風光明媚(ふうこうめいび)」」

彼の発した言葉は私の耳を通り、頭からつま先まですっと流れた。

「「僕の好きな言葉なんだ」」

トクン

私は思わず目を閉じ胸に手を当てた。

心臓に沢山の血が流れたのか大きな鼓動を感じた。

彼の口から放たれた言葉は言霊となり私の魂を震わせた。

そしてその美しい言葉に私は自然と涙が流れ、その涙は感涙したから出たのだと気づくのであった。