「ああ、私も中学受験しとけば良かった。高校受験しんどい」

「だから誘ったじゃん小学校の時に」

私は小学校時代の友人、田中明菜の家に遊びにお邪魔していた。

「どう彼とは?」

「ああ、サッカー部の堀口君とは別れたよ。歳下は弟みたいに思えて無理だったわ。明菜は?」

「そう聞いて!聞いて!私の好きな人、弟助けてくれたの!」

明菜は興奮気味に話しだした。

明菜には瀬戸中学に通う弟の田中真彦(たなかまさひこ)君(中学2年生)が居る。

ある日、真彦君が部活帰りに他校のヤンキーからカツアゲにあったらしい。

カツアゲと言うかカバンを盗られそうになったらしい。

殴られる恐怖に震えてるとカバンを渡したら殴らないと言われ、殴られたくないからカバンを泣く泣く渡したと。

するとモーニング娘。の歌を口ずさみながらその人は自転車で颯爽と現れて弟を助けてくれたとの事。

「ね!ね!絶対昔に私が言ってた自転車の王子様だよね!」

「ああ、昔そんな事言ってたね。ただ王子様は自転車で人は轢かないと思うよ。ところでその人の名前はわかってるの?」

「うん!弟から聞いてる!」

「なんて名前?」

「教えない!」

「なんでよ!」

恥ずかしいの一点張りで名前を結局教えてくれないのでなんて呼べば良いかわからないから私は『モー娘君』と勝手にあだ名を付けた。